テレビ報道における「政治的公平」を考える: BPOの委員会決定を受けて

問題の概要

2016年の参議院議員選挙と東京都知事選挙の2つの選挙において、テレビ報道が政治的に公平でなかったのではないかと議論が起こりました。

これに対し、今年2月7日、BPOの放送倫理検証委員会で委員会決定がなされ、この問題について意見が発表されました。

委員会は、基本的には放送の選挙報道を擁護する形で見解を述べています。

放送倫理検証委員会は、放送法の番組編集準則は倫理規範であるとして、報道が政治的公平性を欠いたからといって罰することはできないことを述べています。

また、放送事業者に要求される政治的公平性は量的公平ではなく質的公平だとしています。




番組編集準則は法規範か倫理規範か

放送法4条1項は一般に「番組編集準則」といわれます。

その番組編集準則のなかで、放送法は、放送事業者に対し番組の編集において「政治的に公平であること」(放送法4条1項2号)を課しています。

ここで議論になるのは、番組編集準則が法規範性を有するかどうかです。

法規範か倫理規範かというのは、簡単にいえば、ある規定が、違反した場合に制裁の根拠とできる規定であるかどうかです。

BPOは、番組編集準則を倫理規範と断じています。

すなわち、BPOの立場からは、「政治的公平」が実現できなかったからといって、そのことをもって放送事業者を処罰できないとされます。

番組編集準則を、私を含め、多くの論者が倫理規範とみなしているのは、これが法規範だとして、政治的に公平でなかったとして放送事業者が罰せられてしまうと、憲法21条が保障する表現の自由を制約してしまうからです。

また、これを法規範とすれば、そもそも放送法がその目的のなかで「放送による表現の自由を確保すること」(放送法1条2項)としていることと矛盾してしまいます。

選挙をめぐる放送についても、放送法に定めた番組編集準則に反するとして公権力の行使を求めるかのような批判は、誤りだと言わざるをえない

BPOは、以上のように、政治的公平性をもって放送への介入や制裁を要求するような主張を批判しています。




政治的公平とは何か

そもそも、政治的公平とは何でしょうか。

公平といっても、量的公平と質的公平の2つが考えられます。

これらは、一方を尊重して番組を作れば他方からの批判ができてしまいます。

そして、多くの場合、放送局の政治的公平性に対する批判者は、発言時間や発言回数、出演者の人数など、量的な公平性を実現するように要求します。

これに対しBPOは、放送事業者が追及する政治的公平性は、量的公平性(形式的公平性)ではなく、あくまで質的公平であるとしています。

ただ、放送法が放送事業者に課している政治的公平が、倫理規範だとしても、また要求される公平性が質的公平だとしても、放送法に政治的公平が規定されているからとして、批判はされ続けるでしょう。

そもそもこのような規定が存在しないのが一番だと私は思います。

まとめ

  • 「政治的公平」は倫理規範であり、違反に対して制裁を要求することはできない
  • BPOは、「政治的公平」はあくまで質的公平であるとしている
  • しかしながら、「政治的公平」が課されている以上、平行な議論が続いてしまう

(参考)
BPO 放送倫理検証委員会「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」
http://www.bpo.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/kensyo/determination/2016/25/dec/0.pdf

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